

『地下研究所を通る時に変な通路を見つけた。昔使われていた通路のように見えるが・・・(中略)何だか人に内緒にしておいた方がよさそうだ』
『ずっと下に降りて行って発見したのは変な洞窟・・・誰かが実験をしていた場所のようだ。(中略)古くなった資料が多く出てきた。この中でよい資料を見つけることができるかもしれない気がしてきた』
『・・・驚く事実・・・いや、恐るべき事実が判明した。(中略)でも、何百年もの間オシリア大陸を支配していた彼なら寿命を延長する方法を知っているかもしれない・・・』
『大陸の全ての人達から非難を受けるだろう。(中略)でも・・・それでも研究が成功するなら・・・成功さえするなら・・・』

心配ではありますが、現状でこれ以上フィリアさんとキニちゃん母娘の力になってあげることは適わないようです。ならば、中断していた過去の事件の調査を再開することにいたしましょう。
アルカドノ協会に入会するには、協会長のマッド氏にレポートを提出した上で面接を受ける必要があるそうです。今一度、情報屋さんに必要なものを用意してもらうことにしましょうか。
ジェニミスト協会が保守派だとすれば、アルカドノ協会は改革派に相当することでしょう。錬金術と科学の融合が排斥されていることを承知の上で入会する覚悟があるかどうか、協会長自らが面接することで確認されました。

アルカドノ協会に潜入した目的は、過去に起きた事件の調査です。しかし、マガティアの住民ではない部外者の私が、情報を収集することは容易ではないでしょう。
マガティアの錬金術師達は過去に災厄があったことは知っていますが、その原因となった事件の詳細を知る人はごく一部のようです。情報を収集するには誰が何処までの情報を握っているかを把握しなくてはなりません。
私の当面の目的は、真面目に錬金術を学ぶ学徒を演じて協会の信頼を得ることです。私が師事することになったラセルロンさんは薬学を中心に研究しているそうです。機械と錬金術の融和を目指すというアルカドノ協会で、何故彼のような研究者が必要になるのでしょうか。

ラセルロンさんの研究助手を務めていると、彼は錬金術に関することよりも自分の過去について語る時間の方が長いということに気付きました。
以前はジェニミスト協会で首席だったというラセルロンさん。研究中の事故が原因で失明し、協会を去ることになったそうです。失意の底にあった彼に光を齎したのがアルカドノ協会の長、マッド氏だったようです。
それ以来、アルカドノ協会に籍を置いて人体の機能を回復、強化する研究を薬学の見地から追及しているそうです。そしてこの度、長年研究していた新薬が臨床試験の段階に入ったとのことで、私が治験対象となることになりました。どんな試験薬なのか説明は受けていませんが、今は彼を信じて服薬するしかないようです。

眼球の裏側では強烈な光が明滅しています。耳の奥では頭蓋を割らんばかりの音が鳴り響いています。脊椎は氷柱に変わり、手足の感覚は既にありません。
そんな私の状態を冷静に観察、いえ診察しているラセルロンさんはとても満足そうです。私にとっては耐え難い苦痛ですが、彼にしてみればこの症状こそ成功の証なのだとか。
快復剤を飲んで私の身体が元に戻るのを待つ間、ラセルロンさんはこの薬について教えてくれました。私が服用したのは、人体の構造を変化させるための薬なのだそうです。共同研究していた錬金術師が失踪して以来、独りで続きを進めて現在に至ったとのお話ですが、どうやらその失踪した人物が事件起こした廃墟の主人なのようです。
NEXON社の著作物利用のガイドラインに基づき、当サイト内の版権画像の再転載を禁じます。