もみじ☆あるき『もみじ☆あるき』本編に戻る

 

きれいな母娘

 以前、取材でアルカドノ協会の施設内を見学させてもらったときにはそう思わなかったのですが、今、私の目の前にいるヒューマノイドは素直にすごいと思いました。

 情報を記録する装置に若干の障害があるのかもしれませんが、情報の処理速度には目を瞠るものがあります。人工知能も優れているようで、蓄積されている情報から最善と思われる結論を導くことが出来るようです。

 そんなヒューマノイドが友達と認識している人物が居るようです。ヒューマノイドに対する評価を訊いて見たいと思い、お土産を持ってその人物を訪れてみました。

 ヒューマノイドの小さな友人は驚くべきことに人間ではなく、背中に小さな羽根を持つ妖精でした。いったいどんな意見が聞けることか興味深いですね。

 

 

キニちゃんのお手伝い

 手先の器用なヒューマノイドが創った模型は、その小さな妖精キニちゃんにとても好評を得ました。見るからにご機嫌な彼女、この分なら話しも聞きだしやすそうです。

 今回の調査は街の人々がアルカドノ協会にどんな印象を持っているかということです。このような内容の場合には、その趣旨を相手に明かすのは得策とはいえません。出来る限り相手の話したいことを自由にさせ、その中で使える情報のみを抽出することにします。

 知的探究心旺盛なキニちゃんは、アルカドノ派の錬金術に興味があるようです。ある理由からジェニミスト派の庇護を受けているという彼女は、このことを周囲の人々に知られたくはないらしく、研究素材の調達に困っているようでした。

 

 

今度はフィリアさんのお手伝い

 キニちゃんのお手伝いを続けているうちに、彼女の興味の対象はアルカドノ派の研究内容にあるのではなく、ヒューマノイドだということが判ってしまいました。これ以上お手伝いを続けても情報は得られそうにありません。

 お手伝いを切り上げて事件の調査に戻ろうとしたのですが、今度はキニちゃんの母親のフィリアさんに呼び止められてしまいました。憂いを湛えたその瞳を見なかったことにするわけにはゆかないでしょう。

 彼女の心配事というのは娘のキニちゃんのことでした。生まれつき身体が弱いキニちゃん、ジェニミスト協会長のカソンさんに薬を処方してもらっていたのだそうです。しかし、その薬も効果が薄くなってきているのだそうです。

 

 

本当にご姉弟?

 人間の処方する薬が妖精に効かなくても仕方のないことでしょう。やはり妖精の病気は妖精に診てもらうべきだと思います。

 しかし、フィリアさんたちがこの地を離れることは叶わないようです。肝心のキニちゃんの体力がオルビスまで保ちそうもないのだそうです。キニちゃんを独りにしてフィリアさんが行動するわけにもいかないとなれば、私が手伝うしかないでしょう。フィリアさんに託されたお手紙を携えて、オルビスにいるお医者様の許へ急ぎました。

 妖精の医師エリックさんは私が持ってきた手紙を読んで薬を処方してくださいました。そしてこの依頼を引き受けている私に衝撃の事実を二つ明かしてくださいました。それは、キニちゃんのお父様が人間であることと、エリックさんが実はフィリアさんの弟さんだということです。

 

 

きれいなバラは誰の為

 妖精は本来、妖精界と呼ばれる世界に棲んでいます。妖精界とは私達が生活する物質界と精霊界を繋ぐ世界だと考えられています。妖精には様々な種族が存在し、下位の存在は人間と子を成すことも可能なのだそうです。

 いくら近い存在だとはいえ、人間と妖精では霊的階位が異なる為に何らかの影響は出ることでしょう。キニちゃんの身体が弱いというのは、そんなところが原因なのかもしれませんね。

 混血はどちらの種族からも忌み嫌われると聞きます。マガティアの錬金術師達は研究材料として見る事はあっても、魔法に近いこの存在を追い出すことはしなかったようです。

 何処にも行き場のない母娘を気遣ってやれるのは、皮肉にも同じ境遇のヒューマノイドだけのようです。心労重なるフィリアさんに希少種のバラを贈りたいなんて、素敵な感情ユニットまで組み込まれているのでしょうか。

 

NEXON社の著作物利用のガイドラインに基づき、当サイト内の版権画像の再転載を禁じます。